60歳からの知恵と体験の交流誌「さすが&されど」。シニアが主役の投稿誌です。http://www.hongopub.com/

2010/4/23

〈体験レポート〉耐震・省エネ住宅を自力建築  シニア
耐震省エネ住宅を自力建築/高橋和章
 引退して自由な時間ができた6年前に自宅を建て替えた。1年かけて自分で設計し、さらに1年がかりで半自作した。費用は住宅会社に注文するときの6割だった。
 ル・コルビュジェは「家は住むための機械である」という言葉を残した。近代建築の三大巨匠の一人といわれ、日本では東京国立西洋美術館を設計した。彼の設計した世界中の建物群を世界遺産に登録する動きがある。
 住宅を「機械」として設計するのであれば、私の現役時代の技術が使える。目標を耐震性、保守費不要、冷暖房費最少の3点に絞った。

一、耐震性
 大地震が発生したとき、周りの家がすべて倒壊しても、自宅は無傷で残る強度を目指した。
 阪神淡路大震災では、住宅の倒壊で総死者の8割である5千人が圧死したという。倒壊した住宅はすべて日本式の在来建築だった。一方、アメリカ式のツーバイフォー(2×4)工法の住宅は無傷だった。そこで、我が家はこの工法に決めた。
 建築基準法で耐震強度を決める重要な要素は、壁の総延長距離である。壁量は基準値の1倍以上が必要とされる。私は3倍の強度になる壁量にした。
 次のポイントは基礎である。多くの地震被害では、外観が正常に見えるのに内部壁がはがれて建て替えが必要になっている。これは基礎の破壊が主な原因である。我が家は砂地盤なので、杭による地盤補強はコストがかかり過ぎる。そこで十分な鉄筋量とコンクリート厚みを持つ箱を作った。砂の上に浮かぶ船のようなイメージである。
 この2つの対策により、巨大地震で家が揺れたり傾いたりしても、地上に置いた段ボール箱のように壊れないはずだ。家が傾いたらジャッキで水平に直せばよい。残念ながらこの皮算用は、巨大地震が来ないと証明できない。私が生きている間に確認したいものだ。

二、保守費不要
 年金生活者にとって、ペンキの塗り替えや外壁のコーキング材の打ち替えなどの費用は重荷になる。50年間なにもしないで済む方法がないか、インターネットで調べた。何と30年前にトタン板(亜鉛メッキ鋼板)の革新が起きていた。アメリカの製鉄会社が発明したガルバリウム鋼板だ。アルミと亜鉛の合金をメッキしている。寿命は従来のトタン板の3〜5倍あるという。価格はトタン板の1割増である。これを屋根と外壁材に採用した。窓はアメリカから輸入した。窓枠は断熱性のよい塩化ビニル製で2重ガラスの製品である。
これで50年間は手入れ要らずの筈である。この結果も、私は見届けることができない。

三、冷暖房費最少
 若いとき、老後の生活を夢想したことがあった。冬は沖縄の別荘で暮らし、夏は北海道の別荘に移動する。残念ながら平凡なサラリーマンで終わったため、夢のままだ。その代わり、自宅内にこの温熱環境を実現した。冬は室温22℃一定・湿度50%、夏は窓を閉め切って冷房で暮らしている。これに必要な冷暖房費は年間5万円である。年金生活者にとって負担の少ない金額である。
 総2階40坪の家全体の冷暖房は、石油ストーブではなくエアコンにした。エアコンのCOP(効率)は6倍以上あり、日本製エアコンの効率は世界最高である。COP6倍とは100ワットの消費電力で600ワットの熱量が出せることを意味する。コストは灯油の3割で済む。我が家は10畳用のエアコン1台だけで家全体を冷暖房している。
 実現の秘訣は、基礎コンクリートの外側を断熱材で覆い、床下にエアコンを設置することだ。冬は1キロワット時・10円の夜間電力でエアコンを運転して基礎に蓄熱している。電気料金の高い昼間はエアコンを動かさないで、基礎コンクリートに蓄熱したエネルギーをゆっくり放熱させて室温を維持している。この方法は日本で最もランニングコストが安いと思う。1階の床全体は室温よりわずかに暖かい。風呂・トイレも含めて冷たい床はどこにもない。エアコンを床下に設置すると、エアコンの送風が人体に直接当たらないから快適である。毎日、基礎コンクリート床にバケツ1杯の水を撒いて、湿度を50%に保っている。3台使っていた加湿器は全部捨ててしまった。
 1年間の設計期間内に書籍やインターネットで沢山の情報を得ることができた。モノ作りが得意な日本のはずだが、国際競争にさらされない住宅産業はひどく遅れたままだ。日本の住宅価格は、アメリカの2・5倍も割高である。しかも、住宅寿命はアメリカの半分もない。日本のサラリーマンはアメリカ人の5倍の住宅費を払っていることになる。私が若ければ、アメリカ並みの価格の住宅を全国に広める行動を起こすのだが……。  
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