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2010/5/24

〈特集/街を歩けば〉電車の中で見た光景  シニア


〈特集/街を歩けば〉
 電車の中で見た光景/時尾 松子

 学校の春休みが始まって間もなくの頃、私は用事があって千葉まで出かけたが、その帰りの地下鉄の中で目にした出来事である。
 西船橋辺りではかなり混んでいた車内も、都内に入る頃には空いてきて、向かい側の席が見えるようになった。3人掛けのその席には、50歳代のオバサンを真ん中にして両側に子どもがいたが、左側の男の子は軽度の障害児らしく、たどたどしい口ぶりでしきりにオバサンに話しかけている。オバサンが優しく相手をしてくれるのが嬉しいようだ。後姿しか見えないが、男の子の前に立っているのが母親らしく、オバサンに向かって恐縮しながら、子どもの口元から流れる涎を絶えずタオルで拭いてやっている。
 入り口に近い方の右隣りの席には、幼稚園児ぐらいの女の子が眠り込んでいる。こちらが、どうやらオバサンの孫なのだろう。オバサンの膝の間に大きな紙袋が2つ置かれているのを見ると、多分、この2人は近郊から早朝に家を出てきたものらしく、おばあちゃんに東京へ連れて行ってもらえることで、女の子も初じめは大はしゃぎだったのが、電車に揺られているうちに疲れて寝込んでしまったようだ。こういう場面に出会うと、私はつい勝手な想像をどんどん膨らませて、独りで楽しむ変な癖がある。
 やがて、母親の方は次の駅で降りるらしく男の子を促すと、別れ難い様子で何度も振り返りながら下車して行った。オバサンも手を振って見送っていたが、今度は自分も次の駅で降りるために支度をはじめて、隣の女の子を起こそうとするが、どんなに揺すっても一向に目を覚ます気配がない。電車は次第に徐行をしながらホームに近づいて来る。慌て出したオバサンは何度も大声で呼ぶのだが、両手に荷物を持っているので抱き起こすことも出来ない。周りの人たちもはらはらしながら見ている。そのうちに停車して、ドアが開き出した。遂にたまりかねたのか、一人の若者が、いきなり女の子の両腕をつかんで立ち上がらせて、そのまま引きずって出口に向かった。続いてオバサンも出ようとしたところに、乗り込んできた客とぶつかってしまい、後はどうなったのか私の席からは見えなかったが、暫くして、電車は何事もなかったかのように動き出した。どうやら、無事に下車できたようだ。一瞬の緊張が解けてほっとした空気が流れたが、あの若者はうまく車内に戻れただろうか?
 バスや電車に乗ると、いろいろな人や出来事に遇うことが多い。都心よりも、むしろローカル線の方が飾り気のない人間味が窺えて私は好きだ。中には不愉快な思いをさせられるときもあるが、この日は思いがけなくも、素朴で優しいオバサンに話しかけていた障害児の無垢な笑顔と、眠りこけている女の子を、とっさの判断で引きずり出した若者の勇気ある行動を目撃して、久しぶり清々しい感動に浸りながら帰ってきた。   
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2010/5/25  17:47

投稿者:新見健一
こんにちは。

記事を楽しく読ませていただきました。

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