60歳からの知恵と体験の交流誌「さすが&されど」。シニアが主役の投稿誌です。http://www.hongopub.com/

2010/6/14

〈交流ひろば〉  シニア


〈交流ひろば〉
 毛筆「5万字書字」を終えて/根本祐一

 手書き離れの時代ですが、私は、世の中のすべての漢字を書いてみようと決心し、『大漢和辞典』に挑戦しました。有史以来現れた漢字は10万ともいわれています。まず、最大親字数を収録した辞典をリサーチしました。その結果、中国の『当今世界収漢字最多的辞典』の『中華字海』の8万字が最も多いことがわかりました。
 『中華字海』は、大使館、輸入書籍店を調べてみましたが、絶版で入手できませんでした。日本では、諸橋轍次著『大漢和辞典』の5万字が最大であることがわかりました。因みに、私たちが日常よく目にする常用漢字で2千字です。『大漢和辞典』の方は偶然全15巻を手に入れることができました。年間1万字、5年計面でスタートしました。
 「1字は1回、書き直しはしない」ルールで最大64画から1画に向けて書き始めました。始めてすぐに、無謀な挑戦であることに気付きました。辞典の活宇の大きさは新聞の活字程度です。これを半紙に16文字(1文字5センチ程度の大きさ)に書きます。とにかく画数が多いため、手持ちの拡大鏡を2個重ねても字体が判読できない文字が次々と出てきます。因みに、手持ちの『広辞苑』の最大画数は29画です。半紙1枚に30分以上もかかってしまい、文字を書くことよりも、まず字体の確認作業に想定外の時間を要することがわかりました。
 スタートから見たこともない圧倒的な文字群に、書けば書くほど逆に文字の山が大きく見えて、早くも挫けそうになってしまいました。書字のルールは「1字1回」のほかに、辞典の活字をそのまま筆写せず、できるだけ伝統的な楷書の書きぶりに翻訳して書くように努めました。そのため「活字」を「筆文字」に変換しながら書く作業にも時間がかかりました。
 長い道のりの中には苦しい時もありましたが、毎日、筆を持っていると、至福の時間に出合うこともありました。時々ですが、筆を持った瞬間無心になり、書くことに集中でき、心静かな時聞を楽しむことができました。いまでは、一日の欠字が気になり、毎日筆を持つことが習慣となり、書くことが楽しくなりました。
 『大漢和辞典』に挑戦していろいろな文字と出合い、いろいろな発見がありました。5万字を完筆した瞬間、ゴールにたどり着いた安堵感に満たされました。また、手書きで書きあげた達成感と充実感を味わうことができました。わたしたち専門家でない者にとって、書はあくまで趣味の世界です。上手下手や字を競う書道から離れれば、書は本来「書く」だけで十分楽しいものです。
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