運転会に行けることが決まった。
そう決まったのだ。
決まったのだが・・・。
いったいこれはどうしたことだろうか。
気づけば運転会まで残り3週間。
どうしたことだろう。持っていく予定だった車両は全然完成してない。
Skypeで「どうしようこれ・・・」
と周りに愚痴をこぼすが、周りから帰ってくる回答も同様。
気づけば参加者皆で夜通し改造をしながらSkypeでグループ会話するというのが日課になっていった。
自身が今手掛けている車両はキハ400とキハ480を各2両とキハ182を1両、そしてスハネフ14を2両の計3形式。
手持ちの急行利尻の増結用にと製作しているのだが作業は遅々として進まず、その一方でタイムリミットは確実に迫っていた。
運転会が決まってからあんなに時間があったはずなのに、どうしていつも直前になって焦って作業しているのだろう?疑問を抱いているのは自分も周りも一緒だが、こうなってしまった以上作業しなければ一向に解決しないのもまた事実。スピーカーの向こうから
「ピキーン!」
「ああああああああああああ、ここ好き」
「カット↑します」
「こんなん秒で終わる」
「まぁ、それは、それと、して」
などの意味不明なワードが大量に飛び交っている。なかなかいい感じに仕上がってると思います。みんな疲れているのだ。いや、実質自分で自分の首をしてめているようなものなのだが。
来る日も来る日も仕事が終わり家に帰ってくれば、誰からともなくグループ通話を開始し、人が集まれば終始意味不明な用語が飛び交う限界空間と化しながらも各々は確実に手を動かしていった。
出発日が近づくにつれて、いつも通り制作物の取捨選択を迫られる。
結果的に自分はレジン複製で作るつもりだったキハ400と切り継ぎ品のスハネフ14を1両削ることで日程を間に合わせることにした。気づけば出発まであと1週間を切り、各々制作物は塗装工程に移る。
その最中に
「雅さん、数年前からの忘れ物仕上げてくださいよ」
とほったらかしている仕掛け品を知っているある人物から吹っ掛けられてしまった。
ふざけんなよ。
やってやるよ。
3両削ったつもりが2両増えてしまったが、どちらもすでに八割近く改造が進行していた為に大した苦労はせずに済んだ。覚えとけ。
時計の針はすでに日付変更から5時間が経過したことを示し、東の空が少しづつ明るくなり始める兆しを見せた。
時は10月26日、早朝。
改造車は予定通り塗装を完了し、組み立てを済ませしばし眺め耽る。
結局夜通しの作業と荷造りとなってしまった。
「じゃぁ、出発します。皆さん現地で」
作業通話の参加者が一人、また一人と約束の地に向けて去ってゆく。
自身の出発時刻まではあと4時間ちょっと。移動中は寝ることができるとはいえ、二十歳を過ぎた体で徹夜はさすがに堪える。この後の旅の同行者であるやはと合流場所と集合時間を打ち合わせ、短い睡眠をとることにした。
「それじゃぁ、9時に六合駅で。」

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